ビュートゾルフジャパンの実態・玉ねぎモデルとは
昨年末にオランダ発のビュートゾルフジャパン社の説明会に行ってきました。
セミナーは創業者の方がいらしてましたが、サービスのデモもなく、ビュートゾルフ社の理念とサービスのざっくりとした説明でした。
会場からの質問は、やはりシステムを導入して業務コストが下げられるのかどうか、売り上げがあがるのか、提供しているサービスや患者さんの評価をどのようにしているか、精神疾患では使えるかといった、
実務に直結するような具体的な内容が多かったですが、
ビュートゾルフジャパンのスタッフの方からは的を得ていない回答ばかりで少し残念でした。
ヒアリングしてみて、ビュートゾルフジャパンさんの事業の仕組みが少しわかったのでまとめてみたいと思います。
そもそもビュートゾルフとは?
- 訪問看護の領域の新しい組織モデル、ケアモデルのこと
- オランダで2007年に1チーム4人で編成された組織でスタートした
- 2014年では全国800のチームが生まれ、約8,500人の看護師が働いている
- バックオフィスが手厚く、事務作業や手続きは役割分担ができている
- コーチングスタッフがいる
特徴的な点として
- チーム間は上下関係がなく、フラットな関係で自律心が求められている
- 煩雑さ、複雑さをなくすためにICTを活用している
- 看護師の50%が学士取得している
- 患者の自立を促す
- チームの看護師は医者や理学療法士などリハビリの医療従事者と連携している
- チーム間で協業する
- チーム内での品質管理や財務管理も徹底化
玉ねぎモデルとは
- 患者を中心として、患者の自己管理からチームでのケアそして、その患者を取り巻く環境を踏まえたアプローチをしていくことを想定したビジョンである
ケアの質の管理
- ICTを使うことにより、機能の改善が期待し難い慢性期でも評価できるようにしている
- 具体的には、どのようなケアを行えば、どのような行動変容が生まれるかを指標で把握できるようにしている
- これにより提供するケアの見える化が進すことで、ケアの質の向上と患者の満足度の向上、そして何より看護師のやりがいが向上することで離職率の低下が期待できるとのことである
ヒアリングした限りのビュートゾルフの実態と現状
- ビュートゾルフジャパンは東証一部上場の大手セントケアホールディングス社から出資されており、代表含め運営スタッフはセントケアホールディングス社からの出向である
- ビュートゾルフジャパン社はアセスメントツールとしてアメリカのオハマシステムを採用している
- 利用料はベーシックプランとオプションプランがある
- ベーシックプランは2年契約で月額6万円、契約加盟金100万円(2018年1月時点)
- オプションプランはコーチング費用プラン(月10万円)と開業支援プラン(100万円)
- 開業支援はセントケア社がすべて行っている
- ベーシックプランの料金はほぼオランダ本体にマージンとして抜かれているため、セントケアホールディングス社は上記オプションをつけて売っている状況
- 2018年1月現在、導入事業所は3拠点
- とはいえ、導入事業所のちいきケアはセントケアホールディングス社の子会社なので実質1拠点しか導入できていない状況
- コーチングスタッフは、元管理者や歴の長い訪問看護スタッフが担当
- コーチング内容はスタッフ教育や算定などなんでも受け付けているとのこと(ただし1回3時間、月2回まで)
- ちいきケアでは10月からシステムを使いはじめているが、以下の点があり現場から不満がでていると管理者からの本音が
- 訪問看護の記録システム・レセプト連携ができていないため、結果的に二重管理になってしまっている
- オハマシステムの使い方が複雑でスタッフが慣れるまでに時間がかかっている
- コーチングする人がサポートに当たっているが、オペレーションが組まれているわけではなく手探りな状態
- 採用はビュートゾルフ社サービスを導入したからといってうまくいっているとは言えないが、オランダ本社のように勤務形態を変えたことがよかった様子
- 具体的に雇用形態は全員正社員とし、週40/30/20時間から就業形態を選択可能にして訪問件数関係なく固定給としている
- http://chiiki-care.com/system/
個人的な所感
正直今のままだと普及しないかなと思いました。そもそもオハマシステムを使うために、データをとるために今まで入力していた看護記録やレセプトを二重で入れ直す必要があることや、現場のオペレーション負荷を考えると現実的ではないと感じました。今後伸びるためには、既存の介護記録・レセソフトとの連携がうまくいくかどうかが鍵だと思います。
今のところ提携しているカイポケとの連携がメインになるかなと思いますが、ただセントケアHDがリソースを十分に割いてなさそうなので時間がかかりそうな印象があります。
また、ビュートゾルフは今のところ海外の事例しかないので、日本の保険制度や組織文化にあうかは未だ未知数です。日本は縦社会が強く、特に医療の現場はその傾向が顕著です。ビュートゾルフの皆が横並びの自立組織はとても素晴らしいものの、縦社会で働くことに慣れてしまっている日本に応用するためには工夫が必要かと思います。
今回のセミナーをお聞していてビジョンはいいなと思いますが、結局運営していて売上アップにつながるのか、訪問看護師の離職率に変化があるのかどうかなど実用的な価値を見出せないと、運営者が導入を意思決定するのは厳しいのかなと思います。
また医療・介護領域のビジネスの難しいところであるのですが、一般の企業の業務システムのように業務効率化、人件費削減できるという文脈が刺さらないのがこの業界の特徴です。事業所は中小企業が多くそこまでお金があるわけではなく、そもそも現場経験者の方が経営をしているケースが多く経営がわかる方がいるわけではなく業務コストを計算する文化があまりないことが要因です。ですので、業務効率をあげつつ、患者さんにとって良いものか、よっぽど売上あがるか、劇的に便利なものじゃないと導入することは厳しいと個人的に感じています。
今後、良い事例が増え、この業界になくてはならないサービスになることを祈っています。
ちなみに最近リスティングの広告費を多めに出して開業支援を促進しようとしているみたいです。インキュベクス のような形になるのか、違った特徴を出していくのか今後に注目したいなと思います。
訪問看護開業・運営で参考になる本はこちら
開業方法や運営方法について詳しく記載されており、こちらをざっくり読むだけでもどういった流れで開業から運営するかがわかります。こちらと次の本を読んで、ibowのサポートを受ければ正直開業支援コンサルいらない気がします笑
こちらは訪問看護事業協会が、全国の訪問看護ステーションから問い合わせがあった内容をまとめた本になります。開業が決まった後に、読むと良いです。必ず疑問に思うことを逆引きで探せる、辞書的な活用をする本だと思ってもらえればと思います。こちらの本とibowさんのサポートがあれば安心だと思います。我ながらibowさん大好きだなとつくづく感じます笑
現場の訪問看護師の方が参考になる本
こちらは在宅医のかたが書いてる本なんですが、訪問看護師や理学療法士・作業療法士・言語聴覚士のかたが現場で働いててとても勉強になります。
患者さんの症状が変わって、なんの病気かわからないケースがあると思います。病院で働いている場合は担当医を呼べば問題になることはないのですが、訪問看護の領域だと看護師さん、リハビリスタッフが症状をみて、様子見をしたほうがいいのか医師を呼ぶべきか、判断して然るべき対応をしないといけないケースがあります。そんなときに役立つ本です。
訪問看護・訪問リハビリに関わってなくても参考になりますのでぜひ手にとってもらえればと思います。